「ココナッツオイル健康法」はアメリカ人のBruce Fife著「THE COCONUT OIL MIRACLE」の邦訳です。
ココナッツオイルは数年前より雑誌にとりあげられたり、女優のミランダ・カーが愛用していることが話題になってますが、僕にとってそんなことはどうでもよくて、ただ純粋にココナッツオイルという食材が体内でどのように作用するのかを知りたくてこの本を読んでみました。
また、ココナッツオイルは飲むだけで痩せるといった情報が出回っていることもあり、ダイエット効果ばかりが注目されますが、そもそも飲むだけで痩せることなんて期待していませんし、理路整然とココナッツオイルのメリットを説明している本著にもそのような「ココナッツオイルは奇跡のダイエット食材」的趣旨は含んでいないことをあらかじめお伝えしておきます。
それではいってみましょう。
ブックレビューと要点まとめ「ココナッツオイル健康法」
01:ココナッツオイルの真実
要点まとめ
- 環太平洋地域においてココナッツは今も昔も重要な食材
- 1980年代に大豆油業界からのネガティブキャンペーンを受けココナッツオイル(飽和脂肪酸)のイメージは低下(飽和脂肪酸と心臓病の因果関係から)
- ファーストフード店などは軒並み植物油への変更を行う
- 植物油の酸化しやすい特性を抑えるため、植物油には水素添加が行われ、トランス脂肪酸を多く含む危険な油へと変化した
02:脂質を理解しよう
要点まとめ
- トリグリセリド類は脂肪酸の分子からできている(3つの脂肪酸分子=1つのトリグリセリド分子)
- 脂肪酸は飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸という3つのカテゴリーに分類される
- それぞれの脂肪酸カテゴリーは一概にどれが健康に有害というものはなく、それぞれの脂肪酸カテゴリーの中で有害なものと有益なものに分かれる
- オリーブオイルに含まれるオレイン酸は一価不飽和脂肪酸
- 植物油のほとんどは多価不飽和脂肪酸を多く含むが、例外はパームオイルとココナッツオイル(飽和脂肪酸が多い)
- 1つの炭素原子に対して水素原子が2つ結合していない状態を不飽和と呼び、その不飽和状態にある炭素原子の数によって一価、多価に分かれる
- 長鎖脂肪酸(炭素数14から18)
- 中鎖脂肪酸(炭素数6から12)
- 短鎖脂肪酸(炭素数6未満)
- MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)とは中鎖脂肪酸がグリセロール分子によって3個結合した状態
- 自然界に存在する脂肪酸のほとんどは長鎖脂肪酸で貯蔵脂肪にもっともふさわしい
- ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸は主にエネルギー生産に使われ、体脂肪として沈着することがほとんどない
- 中鎖脂肪酸は血中コレステロールに影響を与えない
- 不飽和脂肪酸はその酸化しやすい性質からフリーラジカルを生みやすい
- MCTオイルにはラウリン酸が含まれていないという欠点がある
03:心臓病退治の新兵器
要点まとめ
- 飽和脂肪酸もコレステロールも心臓病に直接的な因果関係がない
- 血小板の接着性を高めないのはオメガ3脂肪酸と中鎖脂肪酸だけ
- 中鎖脂肪酸は間接的にHDLを上げて、LDLを下げる
04:細菌と戦う夢の天然兵器
要点まとめ
- ココナッツオイルは抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗原虫効果をもつ
- 中鎖脂肪酸は微生物を覆う脂質膜を破壊することができる
- 中鎖脂肪酸の中でもっとも抗微生物作用をもっているのはラウリン酸からできるモノグリセリド
- ココナッツオイルはピロリ菌を殺す
- ココナッツオイルはカンジダ菌を殺す
05:脂肪を食べてやせる
要点まとめ
- ココナッツオイルのカロリーは実質的に炭水化物に近い
- 一方でココナッツオイルは炭水化物と違い血糖値を上げない
- ココナッツオイルは体脂肪として保存されず即座にエネルギーに変わる
- 中鎖脂肪酸をとったあと少なくとも24時間のあいだ代謝が高まる
- ココナッツオイルは他の植物油のような甲状腺への悪影響はない
06:美しい肌と髪
要点まとめ
- ココナッツオイルはよけいな角質をとりのぞく
- ココナッツオイルは皮膚の感染症を防ぐ
07:食べ物としてのココナッツオイル 薬としてのココナッツオイル
要点まとめ
- 中鎖脂肪酸はビタミンとミネラルの吸収をたすける
- 中鎖脂肪酸は直接肝臓でエネルギーとなる
- その他の脂肪はリポタンパクとして血液を通して体を循環、各細胞に脂質を届ける
- 中鎖脂肪酸は細胞に入るためにインスリンを必要としない
- ココナッツオイルは慢性疲労症候群に対するもっとも効果的な治療法と考えられている
- 中鎖脂肪酸にはHIVを殺す作用があることがわかっている
- ココナッツオイルの消化には膵臓の作る消化酵素が必要ない
- ブドウ糖の代謝異常であるアルツハイマーは、ココナッツオイルが生むケトン体によって症状が改善する
08:食べて健康に
要点まとめ
- ココナッツオイルは極めて酸化しづらく、1年程度の保存は問題がない
- ヴァージンココナッツオイルと精製ココナッツオイルがある
- 精製ココナッツオイルにはココナッツの風味がない
- 母乳の中鎖脂肪酸比率から考えた場合、成人であればおおさじ3.5杯程度のココナッツオイルをとるとよい
さいごに(僕の所感)
この本を読んで試してみたココナッツオイルの好ましい特性は僕自身も実感している。
特にココナッツオイルをとりはじめてから明らかに胃と腸の調子がいいのは、ココナッツオイルの持つ抗真菌性によってピロリ菌やカンジダ菌が減ることによるんだと思う。
ココナッツオイルで日常的に1ランク元気になるということも感じていて、これは中鎖脂肪酸がすばやくエネルギーに変わり、代謝も促進されることで起きているのだと思う。
これらの体験から判断すると僕的には「ココナッツオイルは効く」という判断となり、おそらくこれからもココナッツオイルを常備していくこととなりそう。
ココナッツオイルは「飲むだけで痩せる」であったり「ミランダ・カーの美の秘訣!」みたいなイメージが先行することで逆に品格が落ちているようにも感じる。
というのもこれまで触れてきたとおり、こんなにもたくさんのメリットが科学的に実証されていながら、一般的な家庭の生活への浸透度はいまいち。
これは「ココナッツオイル」でGoogle検索すればわかる。
検索結果には、通販サイトを除けば、根拠をほとんど提示していない「ココナッツオイルダイエット!」やら「ココナッツオイルの美の秘訣!」といったサイトが並ぶ。
これではココナッツオイルの評価が上がるわけがない。
過大評価せず、かといって過小評価もせず、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸という人間にとって好ましい特性をもつ油を生活にとりこむのはまったくもって有意義だ。
そう思える一冊でございました。
さとすきー
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