アドラー心理学をもとに、岸見一郎先生によって2013年末に発行された単行本が「嫌われる勇気」です(文庫化はまだ)。
テレビドラマ化されたこの機会に、もう一度要点をおさらいしておきたいと思い、個人的にためになった箇所をまとめて記事にしています。
書籍版「嫌われる勇気」の要点まとめ
1.トラウマを否定せよ
たとえばある人の過去に、両親の離婚という出来事があったとしましょう。これは18度の井戸水と同じ、客観の話ですね?一方、その出来事を冷たいと感じるか温かいと感じるか。これは「いま」の、そして主観の話です。過去にどんな出来事があったとしても、そこにどんな意味づけをほどこすかによって、現在のあり方は決まってくるのです。
第一夜 No.401/3760
「なにがあったか」ではなく「どう解釈したか」。
アドラー心理学では、過去の出来事に基づいた現在、いわゆる「原因論」を否定しています。過去に起きたことに対して意味を与えているのは私たち自身であり、その過去の出来事のせいで現在が決まっているわけではないと。
やらない理由を探さないで、行動してみる。失敗してみる。
シンプルな課題——やるべきこと——を前にしながら「やれない理由」をあれこれとひねり出し続けるのは、苦しい生き方だと思いませんか?
第一夜 No.661/3760
人はやらないことによって「実際にやればできる」という可能性を残しておこうとする。そしてなにも動かない。うっ。私にも心当たりがあります。
結果はどうあれ「実際にやってみること」が大切だと、この本は教えてくれます。成功すればそのままの道を、失敗すれば別の道を選ぶ。それが前に進むということであると。
2.すべての悩みは対人関係
われわれが歩くのは、誰かと競争するためではない。いまの自分よりも前に進もうとすることにこそ、価値がある
第一夜 No.1140/3760
自分と比べなければならないのは、
周りの人ではなく、自分自身である
と。
周りと比べるから劣等感や対人関係の悩みが生まれると、本著では解説しています。
「昨日の自分より少しでも前に進む」という考えは、アスリートのインタビューなどでもよく耳にするセリフだと思います。健全な成長のためには、過去や現在の自分と競うことが必要なのだと思います。
権力争いに乗らない。
相手が闘いを挑んできたら、そしてそれが権力争いだと察知したら、いち早く争いから降りる。相手のアクションに対してリアクションを返さない。
第二夜 No.1298/3760
この考え方は、特に普段の生活の中で正反対のことを行ってきたな、と感じました。組織に属していると、議論をして勝つことが正しいことの様に感じている人は多いのではないでしょうか。
人は、対人関係のなかで「わたしは正しいのだ」と確信した瞬間、すでに権力争いに足を踏み入れている
第二夜 No.1326/3760
自分の正しさを人に伝える必要はない、というところがポイントです。自分が正しいと思うのならそこで完結する。ゆえに、わざわざ議論をして他人を屈服させることは不要、ということになると思います。
3.他者の課題を切り捨てる
あらゆる 対人関係 の トラブル は、 他者 の 課題 に 土足 で 踏み込む こと—— あるいは 自分 の 課題 に 土足 で 踏み込ま れる こと—— によって 引き起こさ れ ます。
第三夜 No.1744/3760
自分の課題に集中し、他人の課題には助けを求められた場合のみ関与するという考え方です。私には衝撃的な考え方でした。ただし、
他人を常に助ける心構えはしておく
というのがポイントだと思います。
他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。
第三夜 No.2058/3760
本のタイトル「嫌われる勇気」のもととなったとも捉えられる考え方です。自らの承認欲求のままに、人の評価の下に生きるのは確かに息苦しいと思います。
この考え方は、本著を読み直すたびに「本当にそうだなぁ」と感じるのですが、本を読んだ翌日には承認を求める戦いに陥っています。それほどまでに承認欲求というのは、人間に、少なくとも私の根幹にはびこっているものなんだなと思います。
4.世界の中心はどこにあるか
あなたは共同体の一部であって、中心ではないのです。
第四夜 No.2351/3760
なかなか難解な考え方で、私はいまだに実践が不十分なせいか完全には理解ができていません。私たちは共同体の一部ではありますが、
その共同体に貢献することによって感じられる共同体感覚が対人関係のゴールである
と説明がなされています。
いちばん 大切 なのは、 他者 を「 評価」 し ない、 という こと です。
第四夜 No.2596/3760
対人関係は本来対等であり、水平方向にしか存在しないという考え方です。評価したり、他人を従わせようとする行為は、対人関係を縦で考えている表れである、と。
5.「いま、ここ」を真剣に生きる
対人関係の基礎は「信用」ではなく「信頼」によって成立しているのだ、と考えるのがアドラー心理学の立場になります。
第五夜 No.2916/3760
この信用と信頼に区別に関する本著のスタンスは興味深いものです。信用とは、条件付きで信じることで、銀行が私たちに貸してくれる金額は彼らの私たちへの信用に基づいています。
一方、
信頼は無条件に人を信じることである
と説明されています。なぜか「贈る言葉」の1フレーズを思い出しました(笑)
真剣だけど、深刻ではない。
第五夜 No.3520/3760
この本の中で、もっとも好きなフレーズの一つです。真剣と深刻を混同して、不要な緊張を招いたり、動き出すことを恐れたりすることってあると思いました。
震災が起きた後の消費活動なんか、まさにそうではないでしょうか。被災地の助けとなるよう
「真剣に消費」すればいいのに「深刻に非消費」
をしていましたね。
まとめ
他人との協調性が重視される日本に、アドラー心理学は間違いなく一石を投じました。だからこそ本著はベストセラーとなり、多くの反響を呼んでドラマ化されるまでになったわけです。
一朝一夕で身につく感覚ではないし、アドラー心理学だけがこの世の絶対的な価値観というわけでもありませんので、参考となる部分をかいつまんで長期的に取り組んでいけたら良いのではないかと思います。
いずれにせよ、定期的な読み直しが必要そうです。また、この続編である「幸せになる勇気」も別途書評を記事にしてみたいと思っています。
さとすきー
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