テニスのストロークで肘を伸ばしたほうがいいかどうかは、テニスをやっている人の中ではわりとポピュラーな話題。この話題にいつまでも決着がつかないのは、プロテニスプレイヤーの中に、肘を伸ばすタイプと肘を曲げるタイプがいるからだ。肘を伸ばすタイプの代表と言えばフェデラー選手。肘を曲げるタイプの代表は我らが錦織選手。その理由にはグリップの握りが厚いか否か、求めているスピン量の差、幼少時代の教わり方、など諸説ある。
仮説だけど、僕は実際のプロテニスプレイヤーには肘を伸ばすタイプしか存在しないんじゃないかと思っている。肘が曲がっているように見えるのは、骨格、筋力、関節の可動域、利き目などの個々の違いによって差が現れているだけなんじゃないかと。なぜなら肘を伸ばすことには以下の3つの様な大きなメリットがあるから。
- よりパワーが出る
- よりコントロール性が高まる
- より安定感が出る
1つ目のよりパワーが出る理由。よりパワーを出すためにはラケットの重さとラケットスピードが必要になる。ラケットの重さが一定だとすると、ラケットスピードを高めるほかない。腕を振る速度が一定だとすると、ラケットが体から離れれば離れるほど、ボールとのインパクトを迎えるラケットの移動速度は速いことになる。もちろんラケットが通常の長さの2倍あるなど体から離れすぎると、腕を振る速度自体が下がってしまい逆にパワーが出なくなってしまう。しかし、肘を伸ばすくらいでは、腕の速度低下よりもラケットが体から離れることによるラケットスピードの増加のメリットが大きい。結果より大きなパワーが出る。これは長打を狙う野球のバッターがバットを長く持つことや、遠くに飛ばしたいゴルフのティーショットで選択するドライバーがその他のクラブと比べて長いことを想像すると分かりやすい。
2つ目のよりコントロール性が高まる理由。これは肘を伸ばすことによって肘の関節を意図的に機能させないことで実現する。肘は通常曲がることで体と手のひらの距離を調整したり、手のひらの向いている角度を変化させたりする。これは人にとって重要な機構だけど、この柔軟さはテニスのコントロールという視点からするとあまり嬉しくない。テニスにおいては手首しかり、体の軸しかり、固定されているほうが再現性が高まる。肘も同様で、伸ばして固定できればコントロールの向上に貢献する。
3つ目のより安定感が出る理由。肘を伸ばし両手でラケットを支えたままテイクバックすると、必ずユニットターンと呼ばれる体を使ったテイクバックになる。結果、不必要に大きなテイクバックからの手打ちを防ぐ効果があり、インパクトまでの動きの再現性が高まる。
以上、肘を伸ばすことによるメリットをお話してきたが、こんな基本的で有効な体の使い方をプロテニスプレイヤーだったらやらないはずはない。単に画像を見ているだけだと勘違いしがちなこのポイントをぜひ試してほしい。
さとすき
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